INTRODUCTION
ケニアのストリートを舞台に繰り広げられる
子どもたちの儚くも力強く生きる姿
東アフリカを代表する国、ケニア共和国。首都ナイロビから北東に車で約1時間行った所に、人口10万の地方都市ティカはある。映画は、この町のストリートで暮らす子どもたちの厳しい生活環境やその背景、NGOや親との関係をユーモアを交えながら丁寧に提示していく事で、思春期を迎えた子どもたちの儚くも力強く生きていく姿を描き出します。
人々に「チョコラ」と呼ばれ 差別される
青空ぐらしの子どもたち
鉄くずやプラスチックを集めたり、物乞いや小間使いなどで生計を立てている子どもたち。人々からはスワヒリ語で「拾う」を意味する「チョコラ」と呼ばれ、さげすまれています。夜の寒さや空腹、警察による一掃作戦など、ストリートに生きる厳しさは並大抵ではなく、実際多くの子どもたちが自然とシンナーに溺れ、あるいは数週間の内に体が持たずに姿を消します。そんな中でも、彼らは仲間と出会いグループを作り、お互い助け合いながら生きていく----それぞれに人には言えない事情を抱えながら。
子どもたちの気持ちに
ぴったりと寄り添うカメラ
阿賀野川流域に住む市井の人々の生活を描きながら、現代日本の抱える問題を鋭く突いたドキュメンタリー映画「阿賀に生きる」。本作の監督・小林茂がカメラマンとして初めて世に名を轟かせたこの名作の、被写体とカメラの信頼関係を起点とした映画作りの手法は「チョコラ!」にもそのまま受け継がれています。撮影は「こどものそら」以来小林監督の助監督として活動を常に共にしてきた吉田泰三。学童保育の指導員出身の彼ならではの、子どもたちへの思いやりあふれる視線が見事なまでに映像に結実。時間や空間を越えた、子どもたちの珠玉の時間を描き出すことに成功しています。
日本のドキュメンタリー映画界を代表するスタッフの結集と
同志の突然の死
プロデューサーには東京国際映画祭プログラム・ディレクターを務める傍ら、「阿賀の記憶」プロデュース以来、佐藤真・小林茂両監督と深い関わりを持ち続けてきた矢田部吉彦。編集には「チョムスキー9.11」「わたしの季節」「OUT OF PLACE」等近年の話題作に携わってきた秦岳志。また整音は、60年代より羽仁進、土本典昭、小川紳介らと日本映画を代表する作品の数々を作り上げてきた録音の名手・久保田幸雄が担当。また編集協力として、ユーロスペースやBOX東中野の元支配人・山崎陽一が脇を支えます。そして、この映画の影の立役者であり、小林監督をはじめスタッフ一堂の同志でもあった、ドキュメンタリー作家・佐藤真。カサマフィルム代表として映画制作実現の為に様々な尽力をしつつ、スタッフとしては編集・構成担当として参加する予定だった2007年9月----。 前年より患っていた躁うつの病を原因とする突然の他界。これにより編集作業は一旦全て止まり、一時は映画の完成すら危ぶむ声が囁かれましたが、故人の志を不十分ながらも引き継ぎ、形にしていく事が最大の弔いだと思いを新たにし、その後スタッフの精神的支柱として最後までしっかりと映画を支え続けてくれました。